追いかける

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追いかける

「追いソース! どばー!」 「うわあ……」  今日は家でたこ焼きを作っている。たこ焼きパーティーってやつだ。  彼と僕の、ふたりっきりのパーティーだけど。 「濃くならない?」 「濃い方が美味いやん!」 「そういうもんかなぁ……」 「ほらほら、俺の故郷で育った舌を信じて食べてみ!」  彼は関西の人だ。  関西の人って、薄味じゃなかったっけ……関西も広いから、場所によるのかな。  僕は、ふーっと出来たてのソースたっぷりのたこ焼きに息を吹きかけてから、それを口に入れた。  あ、美味しい。  ソース、ほのかに甘い。これなら、何個も食べられそう。  僕はちらちらとこっちを気にしている彼に言った。 「美味しい。また食べたい」 「ホンマ!?」  彼の目が輝く。 「お前の頼みやったら、毎日でも作ったるで!」 「いや、さすがに毎日はちょっと……」 「そこは、ありがとう彼氏様ー! やろ?」  けらけら笑う彼の開いた口に、僕はたこ焼きをひとつ放り込んでやった。 「はふ! 熱いやん! いきなりは反則やで!」 「冷めないうちにどうかなって思って」 「嫌やわ! 関東の人、こういう時怖い!」 「何言ってんの」  くすくす笑い合いながら、彼とたこ焼きを食べ合う。  僕も何かしたくなって、鰹節のパックを開けた。 「追いカツオ……」 「おっ、分かってきたやん! それでこそ俺の彼氏やな」 「追い……青のり」 「歯磨きちゃんとしいやー」 「……追い、タコ?」 「いや、さすがにタコはいっぱいいらへんわ」  生まれた場所は違うけど、彼とはとても気が合う。  一緒に居て楽しい。  こっちに転勤して来てくれて……出会ってくれて、良かった。 「ね、ずっとこっちに居る?」 「うん? こっちって?」 「いつか関西に帰るの?」 「ああ……」  彼はうーんと唸る。 「俺はお前が居るとこに居る」 「どういうこと?」 「どこまでも、追いかけたるってこと!」 「わ!」  ぎゅっと抱きしめられて、僕は箸を落としそうになった。   「……ずっと一緒やで?」 「……うん」  僕だって、どこまでだって追いかけてやる。  そのつもりだから、覚悟しておくようにね!  そんな恥ずかしい言葉を飲み込んで、僕は彼にくちびるを寄せた。  交わしたキスはとても美味しい味がして、僕たちは夢中でそれを味わう。  パーティーはまだ、始まったばかりだ。
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