第五話 ふたりだけの国

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第五話 ふたりだけの国

 週末の土曜日、僕は優の家にいた。  結局、僕たちは付き合うことにした。もちろん、世間からは隠れてだ。  堂々と付き合えるほど、僕たちはまだ、強くない。  優はマンションにひとり暮らしだった。  両親の不仲が原因で、高校に入学してから、おばさんが部屋代や生活費を払ってくれていると言っていた。将来的には自分で全部返すつもりだ、と優はなんでもないことのように言う。  ……家族仲は悪くないのに、後ろ向きな性格の自分が恥ずかしかった。  部屋はまるで家族向けのように広かった。それが、優の孤独を強調しているようだった。  掃除が大変なんだよな、と優はグチをこぼしていた。なので、僕が手伝おうか、と言うと、いいな、それ、と優は笑った。言ってよかった、と僕は思った。  今日は、優の部屋に遊びに来るようになって、3回目だった。映画のDVDを、ふたりで見ていた。宇宙が舞台のアクションものだった。  僕は、アクションものにはあまり興味がないので、ソファに座ってコーヒーを飲みながらボーッと見ていた。すると、いきなり空いている方の手が握られたので、むせそうになった。  隣の優が、僕の方を見ないまま、手を握っていた。  整った横顔が紅かった。  僕は、いつかの約束のように、その手を握り返した。  ようやく優がこっちを見た。  僕たちはふたりで、笑いあった。  優に出会ってよかった、と僕は心の底から思った。  これで、僕たちの話はおしまい。
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