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死の連鎖
#1
庭の雑草をひと通り処分し、ジェイムスは額の汗を拭った。
初夏の太陽は真上から直角にジェイムス振り下ろされている。
遠くに目を向けると、遥か遠くの道に砂埃が舞うのが見えた。
車がこちらに向かってやって来る。車を見るのは数ヶ月ぶりのことだ。
道は、ジェイムスの家で行き止まりだから、間違いなく、彼の家に向かっていれことを意味なくしていた。
半年前に来た車は、保険のセールスマンだった。ジェイムスは口の達者な男を家にあげ、1時間以上何も言わずに話を聞き、ひと言、いらないと言って返した。
ジェイムスは、手にした鎌を持ったまま玄関ドアを開けると、手荒に閉めた。
そのはずみで、ドアの蝶番を止めていたネジが一本、抜け落ち、玄関のたたきに転がる。
ジェイムス・B・ホーンタッグは、本来、5人兄弟の長男だった。
彼が3歳の時、次男が産まれたが、生後7ヶ月の時、母親の不注意で乳母車に乗ったまま坂道を転がり、大通りを走って来た大型トラックに跳ねられて死んだ。
三男はその2年後に産まれた。3階のベランダで遊んでいる時、誤って落下し、打ちどころが悪く亡くなった。
四男が産まれたのはジェイムスが8歳の時だったが、ギャングの抗争の流れ弾が、不幸にも、公園で遊んでいた四男の頭を貫通し、1歳で命を落とした。
女の子が生まれたのは、ジェイムスが13歳の時だった。愛くるしい顔立ちで、将来は間違いなく美人になると近所で言われた。
しかし、それが仇になった。
彼女は2歳の時、誘拐された。
1年後、40キロも離れた森の中、小さな白骨死体で見つかった。全裸だった。
呪われた家族。
そう噂が立つのは自然といえば自然なことかもしれない。
ジェイムスは、なぜ自分だけが死なずに生き残っているのかずっと考え続けた。
ある人からは、やるべき使命があるから、と言われ、またある人からは、運が良かっただけだと言われた。またある人は、貧しい家だから間引きされたとも言われた。
答えなど、あるはずはない。
ジェイムスの結論は、
神のみぞ知る、だった。
そう考えるが、彼にとってもっとも救われたからだ。
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