10個の指輪

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10個の指輪

#2  父親は酒飲みで短気だった。仕事は長続きせず、最後についたら自動整備会社が一番長かった。  しかし、ジェイムスが15歳の時、父親は酒場で喧嘩をし、たまたま持っていた仕事道具のハンマーで男を殴り、殺してしまった。  刑務所に入った半年後、死んだという知らせが来た。原因は不明とされていたが、ムショ仲間に殺されたと誰もが噂した。    介護施設で働いていた母親は、夫が死んでから坂場で働くようになったが、高収入を得るストリッパーになり(母親はスタイルがよかった)、やがて、多くのケースがそうであるように、娼婦になった。  その後、ギャングの愛人になったが、ジェイムスが17歳の時、ボスに銃で撃たれて死んだ。遺体は数ヶ月後、ハドソン川に裸で浮いているのを発見された。  ジェイムスが遺体を確認した時、母親の顔は膨れ上がり、腐乱がすすんでいて見分けがつかなかったが、両手のすべての指にはめていた高価な指輪で確認ができた。  すべてボスからのプレゼントだ。  彼はその指輪を売り、ニューヨークを離れ郊外に家を買った。  10個の指輪は、一生働かなくてもいいほどの価格で買い取られたからだ。  したがって、ジェイムス・B・ホーンタッグは一度も働くことなく一人暮らしすることを選んだ。  既に47歳になっていたが、恋人も友人もいなく、結婚する気もまるでなかった。  彼は、何より子どもの死を怖れていたのだ。  どうせ死ぬ。  いつもその思いに呪縛されていた。
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