届かぬ背中に、届けこの音

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 俺はその聖哉の才能が羨ましかった。いつだって、その背中に追い付きたいと思っていた。  だから、同じ高校に入ったからには、同じ部活に入りたいと思うのは至極当然のことであった。 「それで、聖哉。結局、部活はどこにするのか決めたのかよ。  また、今日も部活見学に行くつもりか?」 「うーん、考え中。バスケ部もテニス部も悪くはないけど、どうもしっくりこないんだよな」  授業も終わって帰りの時間になった頃、俺は聖哉のクラスに行って、探りを入れた。  俺ももう病弱だった頃の俺とは違う。たとえ運動部だろうと、俺は聖哉と同じ部活に入るつもりだった。  聖哉は窓際の席に座りながら窓の外を見つめている。グラウンドからはサッカー部が練習している声が聞こえてくる。 「サッカーか……。うん、それもいいかもしれないな。  よし、部活見学に行こうぜ! お前だって、まだどの部に入るのか決めてないんだろ?」  聖哉は俺に笑みを向けて、そう誘いかけてくれた。 「いやいや、俺は帰宅部にしようかと」  ……嘘だ。本当はそんな風に聖哉に誘われて嬉しかった。 「いいから行こうぜ。せっかくの高校生活、なんもしないんじゃもったいないぜ」
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