届かぬ背中に、届けこの音

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「やった! やったぞ!  俺はついに秋季大会のレギュラーメンバーに選ばれたんだ!」  監督に呼び出され、突然の抜擢を告げられたときは本当に嬉しかった。  そのとき俺は初めて聖哉と同じラインに立ったような気がした。  よっしゃ、よっしゃ、よっしゃあぁあああああぁああ!  俺は喜びの声を心に押し止めながら、グラウンドで聖哉が来るのを待った。  グラウンドにはユニフォームを着た部員たちが続々と集まってくる。  俺はその人影をひとつひとつ目で追っていった。……だが、そこに聖哉の姿はなかった。  練習開始の時間まで、あと5分ほどしかない。おいおい、聖哉。一体何やってんだよ。  俺がそう思ったとき、聖哉はようやくグラウンドに現れた。 「聖哉! 遅かったじゃないか。  聞いてくれよ、俺監督に呼び出されて……」 「ああ、その前に、ひとついいか?  実は俺もさっき監督と話してきたんだけど……」  よく見れば、聖哉はユニフォームではなく制服姿だった。  なんだよ、ユニフォームを忘れてきちまったってか? そんな風に思おうとしたのは、俺の心の自己防衛だったのかもしれない。 「実はさ、俺。もうサッカーはやめようと思って――」  その先の言葉は、俺の耳には届かなかった。なんだよそれ、そんなのってないだろ……。
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