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3年前、優衣は転職した会社の部署で翔と出会った。
翔は口数が少ないながらも、優衣の仕事を手伝ってくれていた。
いつしか2人で仕事など一緒にいる時間が多くなり、自然と付き合う事になった。
ある日、優衣は翔が歩く際、時より右足を引きずる癖がある事を気づく。
優衣は会社の同僚に翔は右足を引きずる理由を聞いた。
会社の同僚から話では、優衣が入社するもっと前に・・・・翔は高校卒業してから今の会社に務めながら、会社が運営しているプロのロードバイクチームにエース選手として所属をしていた。
だが、とある海外レースに日本代表として参加していた時、ゴール直前に大勢の選手たちを巻き込む落車の事故で起きた。
翔はそれに巻き込まれて、右足など大けがを負ってしまった。
翔は復帰のために足の手術してから1年間もリハビリを行った。
翔の足は完全に回復し、医者やチームトレーナーなど周囲から“もう復帰しても大丈夫だ”と、言われたが・・・翔自身はケガをしてからは覇気がなくなり、自らロードバイクに乗ろうと思わなくなってしまったそうだ。
翔は自分がチームの戦力では無くなった事が申し訳ないと思い、チームのオーナーである、会社の社長にチームを抜け、会社を退職したいとお申し出た。
だが、社長は翔の才能に良き理解者で、翔がいつか復帰する事を信じ、無期限のリハビリ期間と言う形で、チームに在留させてくれているそうだ。
「そう言えばさぁ。翔くん宛に手紙が来ていたよ」
優衣は食卓のテーブルに置いてあった翔宛の手紙を、ソファーに座っている翔の所まで運んで手渡した。
翔は何気なく手紙の送り主を確認すると、「・・・えっ!」と声を出し、驚きと動揺している顔をした。
「翔くん・・・誰かの手紙?」
翔はまだ動揺を抑えきれていない表情で、「高校時代の友達から・・・」と、優衣に話した。
優衣は動揺した翔の様子がおかしいと思い、「手紙・・・読まないの?」と、 翔に問いかけた。
「・・・あぁ、そうだなぁ」
優衣の一言で冷静になった翔は手紙の封を切り、中身は便箋とどこかの鍵が同封されていた。
翔はその鍵が何の鍵なのかが分かっていた。
優衣は手紙を読むのを邪魔しないようにキッチンの方へと移動し、ソファーに座る翔の姿を見守った。
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