遠雷

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「さっき、なんの曲聴いてたの?」 「あ、えっと」  あじさい、と言いかけ、声に出さないまま、片方のイヤホンを彼に渡す。  牧くんがそれを右耳に、私は左耳にもう一つを装着して。  スマホを操作したら、あの曲が流れ出す。  恐る恐る視線をあげたら、牧くんが照れたように笑って、小さくうなずいた。  遠雷が彼を連れてくるならば、私は何度でも祈るかもしれない。  また、雨が降りますように――。
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