19 明日はきっと楽しめますよ

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19 明日はきっと楽しめますよ

「ええ? ぼ、僕が……ですか……?」 「はい、そうです。何しろ私はまだ一度もジュリオ様と口を聞いたこともありませんし、何よりクリフ様とはお話しやすいですから」 「で、ですがお見合いされるお相手は僕ではなく、ジュリオ様ですよ? 僕は邪魔では無いでしょうか?」 そんな……! クレアから僕は同席を反対されればお見合いの席に付き合わなくてもいいとジュリオから許可を得たのに……まさか彼女から同席を頼まれるなんて!  「お願いです、クリフ様。どうかお見合いの席に出席して下さい。このとおりですから」 そしてあろうことか、クレアは頭を下げてきた。 「そ、そんな。僕みたいな者に伯爵令嬢であるクレア様が頭を下げるなんておやめ下さいよ」 「でしたら私のお願い、聞いて頂けますか?」 「わ、分かり……ました……そ、その代わりお二人が良い雰囲気になられましたら、退席させていただいてもよろしいですか?」 これが僕の最大限の譲歩だ。 「はい、それで大丈夫です。ではよろしくお願いいたしますね」 クレアは笑みを浮かべて僕を見た―― ****  その日の帰りの馬車の中―― 「おい、クリフ。お前、またクレア嬢に呼び出されたな?」 ジュリオがニヤニヤしながら話しかけてきた。 「え? 見ていたのですか?」 「ああ、そうだ。彼女がお前に近づき、二人で教室から出ていくところまでばっちりな」 まさか、ジュリオに見られていたなんて…… 「やっぱり、二人は付き合ってるんじゃないのか?」 「はぁ!? なんってこと言うんですかぁっ!!」 あまりの勘違い発言に声が大きくなってしまう。 「うわっ! お、お前何でそんな大声出すんだよ!」 ジュリオが耳を塞ぎながら抗議する。ジュリオの言葉に耳を貸さず、僕は続けた。 「そうだ、ジュリオ様。明日のお見合いですが……きっとすごいことになるはずですよ」 「何だ? お前のいつもの勘が働いたのか?」 身を乗り出してくるジュリオ。 「ええ、そうです。きっと度肝を抜くことになると思います。色々楽しめることになる……はずですよ」 「そうか、お前の勘は外れたことが無いからな。憂鬱な見合いではあったが、お前の話を聞いて少しは楽しめるならまぁいいか」 ジュリオは満足そうに頷いている。 クレアには僕からは見合い当日までジュリオには相手が自分だということは黙っていて欲しいと口止めされている。 一方のジュリオは未だに見合い相手がクレアだということは理解していないようだ。 クレアはジュリオが女生徒たちを侍らしている姿を見ていた。きっと、彼女はそのことについて尋ねるだろう。 こうなったら僕も割り切って、ジュリオの慌てふためく姿をじっくり見物させてもらうことにしよう。 馬車の中で欠伸をしているジュリオを僕はじっと見つめた――
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