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6 驚きの転入生
二人の友人に抜き打ちテストの範囲を教えたところで、教室に予鈴が鳴り響いた。
「そう言えば知ってるか？ 今日このクラスに転入生が来るらしいぞ」
噂話にはいつも耳が早いニールが僕達に教えてくれた。
「その話本当なのか？ また随分中途半端な時期に転入してくるんだな。それで男なのか？ それとも女か？」
マイクがニールに尋ねる。
「女だよ。チラっと見たけど、ベージュブラウンの長い髪の中々の美人だった」
「そうか。でもきっと爵位は俺たちより上なんだろうな～」
二人の会話を僕はボンヤリと聞いていた。そんな事よりも今は自分が見た悪夢で頭がいっぱいだった。何しろ一応僕は『先読み』の特異能力者。しかも婚約者がいなかったジュリオが今度の休日に見合いをすることになったのだから。
「どうしよう……もしあの夢が正夢になったら……終わりだ。僕は破滅だ……」
「おい、どうしたんだ？クリフの奴」
「さぁな……ジュリオ様にこき使われて、ノイローゼ気味なのかも……」
マイクとニールが何やらヒソヒソ話しているけれど、今の僕には彼らを相手にする余裕も無かった。
「は～……」
5回目のため息をついた時――
扉を開けてクラス担任の男性教諭が教室に入って来た。その背後にはこの学院の制服を着用した女子生徒の姿もある。
途端に教室内にざわめきが起こる
男性教諭は教壇に立つと、一度咳払いをした。
「ゴホン！ 皆静かに！ 本日より、皆と一緒にこの学院に通うことになった転入生を紹介する。名前はクレア・フリーゲル。伯爵家の令嬢だ。皆、仲良くしてあげるように！」
クレア・フリーゲル……？ どこかで聞いたような名前だ……
思わず僕は首を傾げる。
「さぁ、フリーゲルさん。前に出てきて挨拶をして下さい」
教諭は女子生徒を手招きした。
「はい」
ニールの話していた通り、ベージュブラウンの長い髪の女子生徒は前に進み出て来ると、良く通る声で自己紹介を始めた。
「皆さん。クレア・フリーゲルと申します。本日より、こちらの学院に通うことになりました。どうぞよろしくお願いいたします」
すると、パチパチと教室中に拍手が起こる。
「へ～。確かにニールの言う通り、中々美人じゃないか」
マイクが拍手しながら声を掛けてくる。
「な、言った通りだろう？ でも伯爵令嬢か～……男爵家の俺達じゃ相手にもならないだろうな」
「諦めるしかないな。それに、もしかしてもう婚約者がいるかもしれないし」
ニールとマイクの話を頭の中で繰り返しながら、彼女の名前を口の中で小さく呟く。
「クレア・フリーゲル……婚約者……？」
そこで、僕はピンときた。
「あ～！ 思い出した！ そうだ、クレア・フリーゲルだ‼」
気付けば、僕は立ち上がり……彼女を指さしていた。クレアは驚いた様に目を見開いて僕を見ているし、クラスメイト達は唖然とした様子で僕を見ている。
そう、彼女は僕が本日見た悪夢の中で、ジュリオの婚約者になっていたのだ。
……どうやら、僕は早々にクレア・フリーゲルに非礼を働いてしまったようだ――
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