『かき氷記念日』(透みや)

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『かき氷記念日』(透みや)

 「えっ、かき氷食べたことないの?」  みやこちゃんは答える代わりに、こくりと無言で頷いた。  あー、でもそっか。  言われてみればみやこちゃん、ずっとお父さんと海外飛び回ってたもんね。  日本に来てすぐ、あんな目に遭っちゃってたし……  あの孤児院で食べさせて貰えるなんて、到底思えないし。  「よしっ、じゃあ今日はかき氷記念日だね」  「かき氷記念日……?」  「そ。今日初めて、みやこちゃんがかき氷を食べる日。だから“かき氷記念日”だよ」  そんな手の込んだ、難しいものじゃない。  かき氷機で氷を砕いて、透明なシロップをかける単純な甘味。  だけど自然に、腕によりをかけてしまうような意気込みに内心苦笑してしまうけど。  悪くない気もしている。
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