『みたらし団子』(透みや)

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『みたらし団子』(透みや)

 「今日はねぇ、お土産があるんだよ」  外から帰ってきた透さんが、そう言いながら布袋から取り出してきたのは、深い緑色の紙包みだった。  白い文字で何か書かれているみたいだったけど、生憎まだこの国の文字は勉強中だったため、何が書かれてるのかも中身が何なのかも結局分からなかった。  「今お皿に移し替えるから、縁側で待っててねぇ」  「あの、手伝った方が……」  「良いの良いの、僕に任せて」  上機嫌だなぁ。  いつもニコニコしているし、あまり怒ったところは見たことはないけど。  今はそれ以上に機嫌が良さそうだ。  持ち帰ったものは、余程透さんの好きなものらしい。  本人が良いというのであれば、仕方ない。  大人しく待っていよう。  言われるがまま縁側で、ぼーっと中庭の景色を眺めてまもなく。  「はい、おまたせ」  一歩後ろから差し出された、黒いお盆。  そこには2人分のお茶と、白いお皿に乗せられた……  これは、何だろう?  白くて丸いものに、透明がかかった薄茶色のソースみたいなものがかかっているけど……  「これはねぇ、“みたらし団子”って言ってね。僕のお気に入りのお菓子屋さんの看板メニューなんだよ」  なるほど、お菓子だったのか。  言われてみれば、確かにそれっぽい。  「とりあえず難しい説明はまた今度にするとして、まずは食べてみて」  食べ方を教わりながら、竹串を持ってそろりと持ち上げる。  仲間たちと離されたそれの、薄茶色の衣はてろんと離れがたいように手を伸ばす様は、まるで蜂蜜だった。  「あ、みたらしが垂れないよう気を付けてね」  “みたらし”と呼ばれた衣をまじまじと見たかったけど、透さんが言うならと。  はくりと口に放り込んで、まずは1段目。  「――!」  舌に転がる、もちもちとした食感。  絡み合う甘じょっぱさと香ばしさは、みたらしの衣のせいなのか。  口の中の1個目を味わい尽くしている内にあっという間に消えてしまって、2段目にかぶり付くのもすぐだった。  「ふふっ、美味しいでしょ? 此処の団子屋のみたらしは、特に人気でね。君にも是非にと思ってね」  “気に入ったなら、また買ってくるよ”  口にまだ団子が入ってて喋ることは出来なかったから、代わりに大きく頷いた。 ―――――― (6/16『和菓子の日』より) .
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