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鬼が暗い公園に消えていく。5分後、狩人が追撃に入る。
「鬼狩りは宣誓する。数多の鬼を追い詰め、狩り、己の力と他者の力を合わせ任務に尽くすことを」
夜闇から鬼達の声が響く。
「鬼は宣誓する。鬼狩りの攻撃をかわし、身を潜め、己が力と仲間とで最強の鬼であるべく戦うことを」
運営が告げる。本能を解放せよと。
「インスティンクト リリース」
先に明るい場所を離れている鬼の方は圧倒的に目が暗さに慣れている。目が慣れる前に襲われると分が悪い。気配や音に神経を尖らせて隼太はロープガンを構えながら走る。微かな違和感に反射的にトリガーを引いた。ぎゅるっと音を立てて相手に巻き付いたロープがじわりと発光を始めた。それを横目に即座に距離を取る。
捕まった相手は自力で拠点エリアに戻るが、夜目に発光する脱落者は周辺に捕獲した者がいると報せることになる。ひとり捕まえたからと得意になっている暇などないのだ。横から飛び出してきた腕をかわしてがら空きになった相手の脇腹に触れる。舌打ちと共に浮かび上がる南京錠の印。これで狩った鬼は2人。現状位置を確認しようとした頭上で音がした。
「やばっ」
ぎゅんっ
遠くから飛んできたロープが木の上に潜んでいた鬼を捕縛した。ミオ先生、いや、砌の援護か。すごいな、遠距離射撃。安堵と感心に緩みかける自分を叱咤してだいぶ目が慣れてきた公園内を移動する。
仲間への応援、防戦。研ぎ澄まされていく感覚に高揚する気持ち。やはり自分は狩人の方が好きだ。終了の笛が鳴る。あっという間と思うも息は上がり、汗びっしょりだ。
集まった拠点で生き残りを喜び合い、捕まってしまった仲間を労う。結果は、
「2人の差で鬼の勝利です」
やっぱりという半ばあきらめの声と悔しがる声、勝利に喜ぶ声が混ざる。メンバーの一人が呟いた言葉がやけに記憶に残った。
「夜凪が相手で差が2人って珍しいよね」
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