ゆめおに

　人々の多くが、知らずと参加している。これは自らの意志で挑戦しているゲームである。
　望む者全てに参加資格あり。いつでもリタイアは可能。
　制限時間は無制限。生誕直後から死亡までの間。
　ルールに厳格な規定は無し。社会法規に従うも従わないも自由。

　「人生とは、死ぬまでの暇つぶしだ」と言う者がいる。その暇を解消すべく、人々はこのゲームに参加して、終わりを待つ。

　ゲームの流れを説明します。

　先手は、必ずプレイヤーです。所謂、「鬼」になります。
　ゲーム開始に当たり、プレイヤーは「夢」を設定します。何でもいいです。やってみたい事。なりたい職業。結婚したい相手。お好きなものをどうぞ。
　「夢」は複数でも結構です。途中で増やしても構いませんし、減らしても構いません。ご自分に見合った規模と数でご挑戦ください。
　設定が確定した瞬間からゲームスタートです。攻略の指南書はありませんが、ヒントはそこら中に散らばっています。
　ゲームの進行には、様々な障害や困難が立ちはだかるでしょう。基本的には個人プレーですが、時には他のプレイヤーの助けを得ることも必要になってくるでしょう。あなたと「夢」が全く同じプレイヤーを発見したら、共に「夢」を追い掛けると、「夢」を叶えやすくなるかもしれません。
　「夢」に辿り着けないと判断した場合、無理をせずに「夢」を見直しましょう。手遅れになると、修正が利かない場合がございます。

　「夢」を叶えましたら、その「夢」に対するあなたの「鬼」の手番は終わりです。他の「夢」を追いかけましょう。また新たに「夢」を設定してもよいでしょう。
　但し、手番は交替になりますので、叶えた「夢」は、今度はあなたを追いかける「鬼」になります。あなたは追われる身になります。上記をご理解の上、どの様な「夢」を並行して追いかけるか、慎重に設定を行ってください。
　「夢」に追われる様になったら、また現れる困難や障害を適切に処理しましょう。追われる側になると、容易にリタイアはできません。リタイアには、煩雑な処理を要します。その処理を怠ると、ゲームが崩壊します。他のあなたの「夢」を取り逃がすだけでなく、他のプレイヤーの「夢」にも支障を来します。
　煩雑なリタイア処理をしないようにするには、あなたは「鬼」となった「夢」に捕まるまで追われるしかありません。逃げるのを止めて、あなたは立ち止まることもできます。しかし、それはあなたのゲーム全体を一時的に中断させることになりますのでお忘れなく。

　あなたが「鬼」となって「夢」を追いかけることを「追求」と言います。「夢」を捕まえたら、あなたの勝ちです。
　「夢」が「鬼」となってあなたが追われることを「責任」といいます。「夢」に捕まったら、あなたの負けです。
　「鬼」となった「夢」から安定して逃げ続けるには、「追求」から「責任」へと交替する際に、「覚悟」を充分に持っておくことが必要です。「覚悟」が足りていないと、ゲーム中の逃げ足が遅くなり、「夢」に捕まってしまいます。捕まってしまうと、あなたの負けであるうえに、ゲームが一時中断してしまいます。勝ち続けるには、「覚悟」が足りていないといけません。

　「夢」に捕まり、ゲームが一時中断となった際、ここで負けを確定させるか、再び同じ夢を追いかける「追求」ターンに交替するかを選択できます。負けを確定させた場合、ゲームバランスが悪化します。あなたの他の「夢」の「追求」及び「責任」のどちらにも不利益を及ぼしかねませんので、ご注意ください。
　再び同じ「夢」を追いかける「追求」に交代する場合、ここでまた「覚悟」の補給ができるチャンスです。あなたの「夢」に執拗に追いかけ回されないために何が必要なのかを今一度考えてみましょう。
　やりたい事は、ちゃんと最後までやり抜けますか？　なりたい職業に就いて、理想の働き方ができていますか？　結婚したい相手と結ばれて、その人をちゃんと愛していますか？　あなたに不足していた「覚悟」を再度補いましょう。
　「覚悟」を決め、「追求」し、嘗て追いかけた「夢」の形を再び取り戻したら、またしても「責任」に交替です。次は安定して逃げ切りましょう。

　「追求」は、誰しも能動的に「夢」を追いかけます。しかし、「責任」は、誰しも受動的に「夢」に追われがちです。少しでも能動的に「責任」を完うできるよう、「覚悟」を忘れないようにしましょう。

　あなたと、あなたの「夢」との「鬼」ごっこ。
　人はこの一連の歩みを「人生」と言います。

　あなたは、ゲームを楽しんでいますか？