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ヒッチコックのようなサイコスリラーが撮りたい。
そんな想いで持ち込んだ映画の企画が、部署を通過するごとにお偉いさんに改変され、めでたく撮影に入るころにはラブロマンスになっていた。よくあることではないが、時折あることである。映画業界というのはそういうものだ。
主演俳優だけは何故かスケジュールの都合がきいてしまい、当初の予定のままキャスティングされている。
裸で浴室にこもり、叫び声をあげて刺されるのがよく似合う、美人だがいかにもスリラーで死んでそうな安っぽい女優と、その女優を追い回すはずだった目の血走った醜男。
今、スリラー女優はスリラー俳優に追い回されて悲鳴をあげている。不気味さと悲壮感のただよう素晴らしいショットだが、これは殺害シーンではなくラブシーンだ。
果たしてこの映画の行く末、どうなるのだろう?
監督の自分としては、案外ウケる気もしている。
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