朝霧麗華の場合

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朝霧麗華の場合

 遺書  吉野若葉様  ずるいよ、先生。私を捨てたら全部ばらしてやるって言おうにも先生は付き合ってくれなかった。私を先生のものにしてくれなかった。  でもね、私気づいてるんだよ。先生、実は私のこと好きでしょう? 女の人同士で結ばれちゃいけないこの世界が悪いんだよね。だったら私、こんな世界いらない。  昨日、髪を切ったの。私、調べたんだよ。どうしたら先生のものになれるか。遺骨をダイヤモンドにする技術があるって知ったんだけど、先生と私は結婚できないから遺骨を先生にあげることってできないみたい。でもね、髪の毛でも同じことが出来るの。髪は女の命って言うでしょう? 私の魂は骨じゃなくて髪にあるの。  私、先生の婚約指輪についてるダイヤより大きなダイヤになるの。だから、私以外の男から貰った指輪なんて捨てちゃいなよ。私が死んだ3週間後に先生の家に届くように手配したの。寂しい? 大丈夫。またすぐ会えるから少しだけ待っててね。  ねえ、先生の婚約者は先生のために死ねないでしょう? だから、先生のことを本当に愛しているのは私だけなの。私だけが、世界でただ一人、先生のためにダイヤモンドになれるんだよ。  大事なことだから最期にもう一度書くね。若葉さん、大好きだよ。若葉さんに心酔する人間はこの世にもあの世にも私だけなんだから。
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