友人がアイスワゴンに攫われたので洞窟まで追いかけてみた

2/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「あれか!」 「ああ! 八尋くん! あの窓を見たまえ、善弥くんが!」 よく見ると後方の窓から、外を見る善弥の姿が見えた。 遠目で見ても生気がなく、少し虚ろな目をして、らしくない様子だった。 「ったくなんであいつはいつもこう……って言ってる場合じゃねぇか!」 「ああ、とにかく追いかけて見失わないようにせねば……!」 「お前、そういう探査能力みたいなのないのか!」 「なくはないが消耗する! 完全に見失ってから検討した方がいい!」 「真咲の身体に負担がかかるんならそうするしかねぇか……しっかり口閉じとけよダーク!」 「ま、待ちたまえ八尋くん、この道の法廷速度は……!」 「相手が相手だ、一旦忘れろ!」 「絶対に許されないことだからな……!!」 ダークの叫びを聞きながらアイスワゴンが停車するまで追いかけて行った。 車の中のモノたちは急いで善弥を担ぎ、洞窟へと連れて行く。 二人も気配を悟られないように急いで後をつけていく。 開けた場所で待ち受けていたように、同じ白い装束の女たちが善弥を隠すようにして立っていた。 「なんだ、バレてたのか」 「ええ。ここまで足を運んで貰って申し訳ありませんが、お帰り下さい」 「出来んな。お前たちは雪女だな」 「マジかよ」 「そのようなものです」 「善弥を連れて行った目的はなんだ?」 「我々は血も途絶えかけている、次の世代を生まねばならぬのです」 「それになんで善弥が」 「彼は私たちの出したものを食べました。返すことはできません」 ハッキリというまとめ役らしき雪女に、ダークが鋭く言い返した。 「……『よもつへぐい』か」 「なんだそりゃ」 「簡単に説明するなら、『この世ではない世界の食べ物を口にすると戻って来れなくなる』というような話だ」 「その説明が当てはまるなら善弥は……『二度と帰って来れない』ってことか?」 「その通り、彼には我ら一族の血を繋ぐ為にここに残って頂きます」 「身勝手過ぎやしないか?」 「ですが、彼が我らの同胞を口にしたのは事実」 「同胞?」 「……なるほどな。あれは『ただのアイスではなかった』ということかね」 「はい。『失われた分』はしっかりと働いて貰わねばなりませぬ」 「な、なぁ。どういうことだよダーク」 「君が混乱するのも無理もない。彼が口にしたのは、アイスに化けた彼女たちの仲間だったのだ」 「……は?」 「理解が早くて何よりです。ですから、我々としても返すことはできないのです」 「……いや、勝手に食わせたんだろ?」 「口にしたのは事実ですので」 「何言ってんだ? 意味が分からん」 グッ、と拳を握りしめて八尋が雪女達を睨みつける。 そして、思っていたよりも低く、冷静に淡々と問いかけを始めた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!