友人がアイスワゴンに攫われたので洞窟まで追いかけてみた

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「なぁ、八尋(やひろ)くん」 「何だよダーク」 動画で生計を立てる八尋は準備をしながら、仲間の名前を呼びながら振り返った。 ダーク、と呼ばれた青年はあだ名ではない。 『真咲(まさき)』という男に取り憑いている、本来ならば邪悪な塊。 それを受け入れて仲間になっていたのがダークだった。 真咲があまり人と話すのが得意ではないが故に、ダークに身体を貸していたのだった。 「お前まで善弥(ぜんや)みたいに暑いし『アイス食いたい』とか言うのか?」 今日は外の撮影日。 先ほどまでもう一人の仲間、善弥も一緒に準備していた。 だが、近くを通りかかった陽気な音楽を流すアイスワゴンに惹かれ、離れていったところだ。 「……いや、確かに私も興味はあるのだが」 「食いたいなら行って来いよ? 準備だけならオレ一人でも出来」 「違う、そうじゃないんだ」 「なんだよ?」 「善弥くんが、今、消えたのだが」 「は?」 八尋が振り返ると、そこにはアイスワゴンも、その近くでアイスを食べていた善弥の姿もなかった。 「……あいつ、また悪ふざけを」 「ち、違う」 「何だよダーク、言いたいことはハッキリと」 「アイスワゴンの中から出てきたモノ達に引きずり込まれて彼は連れていかれたんだ!」 「ハァッ!? なんで!?」 「私にもわからん!」 「じゃあどっち行ったか分かるか!?」 「あちらに見える山の方だ!」 「よし、よくやったダーク! それが分かれば追いかけるぞ! 車に乗れ!」 「わかった!」 言うや否や運転席へ飛び乗り、八尋はエンジンをかける。 ダークは出していた機材を担ぎ後部座席に置くと、助手席に急いで移動した。 助手席の扉が閉まると同時、八尋の運転で車は走り出す。 アイスワゴンが向かった方へと車を走らせると、すぐにどこかふらふらとしながら走るド派手な車が見えてきた。
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