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白いミニプレートの上に炒り豆の小さな山が出来上がっており、それに手を伸ばしては口に運ぶ。その動きを繰り返すうちに、ついうっかり数粒ほど床へ落としてしまった。コロコロと軽い音を立てながら足元から離れていく。
その時「ニャッ!」と鋭い声が上がったかと思えば、エレが転がり続ける豆を素早く追いかける。突如として現れた獲物の気配に、猫としての本能が機敏に反応したようだ。
豆に狙いを定めると、すばしっこく飛びつきパクッと口に含む。そして満足そうに噛み砕いた。
それを眺めていたリルは不意に立ち上がると、エレの背後に近づきプレッシャーを与えてみた。
エレはそれを華麗にスルーし、2つ目の豆に口をつけ始める。
リルは眉根を寄せる。幾らかつての敵対関係が解消されたも同然とは言え、こうも油断して寛ぐのはどうなのだろうか?
腐っても私はサタンだ。畏怖されるべき恐ろしい悪魔なのだ。本来なら如何なる時も警戒して然るべきなのに、この猫ときたらバカ丸出しで背後を晒している。勝手に無害な存在だと認識されているようで妙に癪に障った。
リルはしゃがみ込んでエレの背中をツンツンと突っつく。あまり呑気にしているとここを一突きにするぞ! ――そんな脅しのメッセージを込めて。しかしエレは迷惑そうに体を捩るだけだった。
「この間抜けめ!」リルは思わず厳しい口調で叱りつけた。
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