第1章 本物のクリスタル

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 帰ってきた直後、星恋七(せれな)は全身の打撲傷や切り傷で苦しそうにしていたが、リルが回復魔法をかけてやると見る間に回復し、今や元気に外で遊び回れるようになっていた。  城から回収した星恋七の両親により製造されたクリスタルには、やはり模倣品以上の価値はない。  外の世界から遮断された劣悪な環境の中で、精巧な物を作り上げてしまう技術力には感嘆するが、本来の目的を達成できなかった以上、彼らの努力は徒労に終わったと言う(ほか)ない。  色とりどりのクリスタルを手に取って眺める星恋七にそれが失敗作である事を伝えると、何とも言えない悲しそうな顔をしていたが、それでも両親の忘れ形見としての意味は十分にあるようで、大切そうに自分の部屋へ持っていっていた。  リルは自身のプライペート空間として使用している部屋に行くと、タンスの1番下の引き出しを開ける。そこにはラストから強奪した宝物類や残り少なくなった紙幣などと共に、6つのクリスタルが保管されている。それらがゴロッと重そうな音を立てながら空きスペースへ転がった。  これも何かの巡りわせなのだろうか、星恋七の一家がどうしても手に入れたかった物を私は6つ持っている――。
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