第1章 本物のクリスタル

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 星恋七はクリスタルを両手でギュッと握ったまま動かなくなった。何か特別な思いを感じているに違いない。  やがて「本当に、魔法が使えるようになるの……?」と、あどけない瞳で尋ねてくる。 「その中で眠っている妖精と契約を結べば、体の細胞が魔力細胞へ書き換えられて魔法が使えるようになる」リルはそう説明した。  しかし、それからしばらくしても星恋七はただクリスタルを見つめるばかりで、何かアクションを起こす気配はない。それどころか2度、3度と首を(かし)げる。“妖精と契約”と言われてもピンときていないのかもしれない。  実のところ、リルもその具体的な方法までは把握していなかった。何をもって契約とするのか、何か儀式でも経る必要でもあるのか様々な点が不明だった。魔界に伝わる文献でも契約の起点に関する記述は乏しく情報が限られている。  それからリルが思いつくままに「心の中で『契約がしたい』って念じてみれば?」と言ってみたところ、星恋七はそのような素振りを見せた。  すると驚いた事に、クリスタルが(まばゆ)い光を放ち始める。そして「パンッ」と破裂音を響かせながら粉々に弾け飛んだ。それは数え切れないほどの細かい破片となってスーと空中へ消えていく。  わあっ! 星恋七は驚きのあまり悲鳴を上げながら、床に尻もちをついてしまう。
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