第1章 本物のクリスタル

5/31
前へ
/196ページ
次へ
「……成功したの?」リルは目を見開きながらそう尋ねるも、星恋七からの返事はない。  星恋七は唖然としていたが、やがて我に帰ると本棚の方へ駆けだした。そして棚の中から1冊の本を抜き取ると、リルの服を引っ張りながら外へ向かう。その意図を理解したリルは黙ってついていく事にした。  庭に出た星恋七は『ゼロから学ぶ魔法基礎』とタイトルの書かれた本のとあるページを開き、そこに掲載されている魔法陣を木の枝を使って地面に描き写し始める。  それをリルが上から覗き込んだところ、そのページでは初歩的な『風魔法』の説明がなされていた。実際に魔法陣を描いて魔法が使えるかどうかを確かめようとしているのだろう。  その後すぐに手のひらサイズほどの魔法陣が地面に出現する。星恋七は周囲から落ち葉を何枚か拾い集めて魔法陣の中心に置く。 「えいっ! うーん、うーん!」  何やら念を送っている。  本の表記では、魔法陣によって魔法が発動し、落ち葉が風に乗って浮かび上がっているが実際は何の変化もない。 「あれ……」  一連の流れを見ていたリルは笑いそうになる。明確なミスを幾つも犯しているのだ。  まず描かれた魔法陣が下手だ。魔法陣を構成する幾何学(きかがく)模様が本来の形からズレていて失敗作になっている。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加