遠子

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遠子

 煌めくペンライトが埋め尽くす会場。人々の熱い視線を独り占めするのは何を隠そう私の彼だ。  彼が笑えばどこかの誰かが卒倒し、彼が歌えば会場全体が熱狂に包まれる。  そんな黄色い声に負けず劣らずの声援を送ると、彼がこちらをチラリと見やって満面の笑みを浮かべる。 「みんな、俺に勇気をください。俺は、今日まで支えてくれた大切な女性にプロポーズをします!」  彼はゴンドラに乗ったかと思うと、私の席まで一直線で駆けてきた。  え、何これ⁉︎  気づけば私の周りにはスペースが設けられ、スポットライトが当てられている。彼は息を整えながら片膝をつくと、衣装のポケットから真紅の小箱を取り出し、ゆっくりと開いて言った。 「俺と、結婚してくれますか?」  やっとこれだけのファンが出来たのに、これから世界だって目指せるのに。  こんな、みんなの前で……  でも、答えは一つしかないよね? 「……はい、よろ––––」  ピンポーン  ピンポンピンポーン  ピンポンピンポンピンポンピンポーーーン 「ぅうるっっっさい‼︎」  
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