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……はい、気になっています。貴女の事が好き❤️です……
と、素直に言えたらどんなにいいだろう。
「気になってなんかいないよ」
と、そっけなく言った。
彼女の方が背が高いが、僕の方が歳上だ。
ここは威厳を示さないといけない。
「嘘だ〜。顔に書いてあるよ。」と、屈託も無い笑顔を見せる。
彼女の目線を逸らす、僕。
「雨止まないね。私、お母さんが迎えに来るの。
矢神さん、傘持っているの?」
と、親しげに聞いてくる。
「持って無いけど・・・(≧∀≦)」と、声が低い。
「じゃ、乗せてあげる。お母さん自動車で来るから。
乗って行きなよ。」
と、云う言葉が男前だ。
……こんな喋り方するんだ!ちょっとイメージが違う……
でも、その口調も好感が持てる。
僕は彼女の顔を見る事無く
「ありがとう。お願いします。」
と、嬉しさを心に秘めて小声で元気無く言った。
「元気出してよ。私も貴方の事が気になっているんだから!」
と、明るくあっさりと言われた。
……揶揄っているのか?……
と、彼女の顔を見つめると真剣な表情だ。
見つめ合う瞳と瞳。
外国の恋愛映画の一場面に似た情景。
映画ならここでキスシーンだ。
と、思っている所に、遠くから女性の呼ぶ声。
お迎えの車が着いたみたいだ。(いいところなのに!)
「お母さん、来たみたい。一緒に行こう」
と、大胆にも僕の手を取り自動車の元へ駆け寄る美少女。
手を取られ連なる男もかなりのイケメン?(僕のことです)
「お母さん。矢神君、傘持って無いの。送ってあげて。」
「わかったよ。早くお乗り、雨に濡れるよ」
と、二人は後部座席に乗り込んだ。
「お友達?」と母親は明子に聞いた。
「矢神くん、私の事が好きなんだって。」
と、あっけらかんと言う。
僕は返答しようも無く、ただビックリするだけで下を向くしかない。
「そうなの、矢神くん。明子と仲良くしてあげてね。」
と、微笑みながら、後を振り返り僕に云う。
お母さんも上品な美人である。
「この娘、口が悪いけど根は良い子だから、気にしないでね。
矢神くんのお家、何処かしら?」
「僕の家は、桜ヶ丘町の・・・」
と、住所を告げる。
「あら、私の家の近くね。通り道だわ。」
と、母親が言った。
僕は夢心地である。隣に好きな美少女がいる。
今まで一度も話した事が無かった人が、今は親しげに横にいる。
綺麗な横顔。まつ毛も長く鼻も高い。
僕は、隣で彼女をチラチラ観ていた。
……このまま、走り続けて欲しい、家に着かないで……と
願っていた。
だが、無情にも車は僕の家の前に停まる。
「有難うございました。」と僕は母親に感謝の意を示すと、
母親は、笑顔で返してくれた。
「今度、また会おうね。」
と、明子が云う。
「うん」と、嬉しさを表わす事なく無表情で答える僕。
今日は僕にとって最高の記念日になっていた。
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