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僕は、2年3組の学級委員長だ。
自分で言うと手前味噌になるのだが、僕は勉強の成績はいつも学年でトップクラスだ。
野球も上手くサードを守っている。
打順も二年生にしては珍しくクリンアップである。
更に「女生徒から人気者だ」と、自分では思っている。
このクラスでも人気が有るみたいで、学級委員長に選出された。
そんな事はさて置き、今日は学年のクラス毎の学級委員が集まる
会合が放課後に催しされる。
これは、二か月に一回行われる学校行事で有る。
今年度始めての会合で一回目は、5月に行われた。
ここでの協議は、生徒の要望の声を届ける為にあるのだが、
声を発する人はあまり居ない。
学校側の注意事項の通達が主な会合の中身となるのだが、
今日は少し違った。
それは、文化祭の内容について検討されたからだ。
毎年文化祭の行事が10月に行われるのだが、
「マンネリ化していて面白く無い」と、云う意見が三年生の
辻田智治さんからでたのである。
辻田さんが云うには、
「文化祭の催し物は、毎年同じでつまらない。
英語のスピーチコンテストがあるが、教科書を暗記しただけの物だし、他にも詰まらない物がある。
もっと大胆な事をやりたい。
たえば、寸劇をやったり、バザーをやったり、他にも色々ある。」
と、具体的な提案があり、委員長会は白熱の議論となった。
私達の中学校は1年から3年まで4クラスづつあり、
1クラスに男女2名クラス委員が参加している。
24名参加の議論である。
今までは下級生の発言はあまり無く、三年生中心に話し合われるが、今回は文化祭という事で関心が高いのか、一年生の人も
発言している。
その中に、小塚明子もいる。
小塚明子が云う
「私は今年入学したばかりなので、文化祭の事は良く知らないのですが、辻田さんの意見の中で寸劇の言葉がありましたが、どの様な
事をされるのですか?」
と、小塚さんは、寸劇に興味を示している。
「まだ具体的には決めていませんが、たとえば寸劇をやるために、
学年に関係無くメンバーを募り、練習、発表と言うのはいかがですか?」
と、辻田智治さんは、凛々しく澄んだ顔で小塚明子を見て言った
……まずい。……と、僕は心で叫んだ。
辻田さんは、多くの女性ファンがいると噂されている人だ。
そして、プレイボーイとの評判もある。
辻田さんの小塚を観る目に熱さを感じる。
小塚の方は、それほど感じてはいないみたいで、隣の女子と話ししている。
白熱の議論は一時間程続いたが、決まった事は、
英語のスピーチコンテストを、廃止して寸劇を入れる。
また、バザーを入れる事で、その売り上げを寄付する事を
決めた。具体的な内容は、生徒会執行部が担当し
7月の委員長会で賛否を取ると、生徒会長の沖田さんから発表された。
無事に委員長会も終わり解散となったのだが、僕は小塚明子を見ていた。
小塚も僕を観て微笑んでくれた。
その時である。
辻田が小塚の側に行き、何やら話している。
話の中に割り込むのは出来ないので、僕はそのまま練習場に向かった。
後ろ髪を引かれる様な思いだったが、僕は丸刈りで後ろ髪は無い。
野球部は何故か丸刈りと決まっているが、時代錯誤の声もある。
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