一礼目 東京へ

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「……ねぇ。」 「ん?」  声がした方へ振り向くと、宗也の幼馴染み君が、涼の視線の少し下から、真っ直ぐ涼の目を見上げていた。 「昼休み、少し時間ある?」 「嗚呼。」  躊躇うことなく、涼に右横から話しかけてきた幼馴染み君は、気が付くと、黒縁眼鏡の鼻当てをクイッと定位置へ戻し、数学の教科書を開いて次の授業の準備をしていた。宗也の誘いを(かわ)したことで安心し、その場の勢いのまま、幼馴染み君の誘いを快諾してしまったことを、授業中、涼は悔いていた。  転校二日目の昼休みに、クラスメイトからの呼び出し。  これが男子からのものでなかったら、彼の高校生活は二年目にして、やっと春が来たと心躍らせるところなのだが、残念ながら涼の目の前にいるのは、女子のように小柄だが、まるで、口から生まれてきたかのような(やかま)しさを持つ男子だった。
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