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三礼目 仲間
翌日、入部届を、職員室へと提出しに行った涼は、茶道部の顧問が、担任の太刀内先生であったことに少なからず驚いた。
流石に昨日のことを気にしているのか、昨日とは打って変わって、宗也は控えめに挨拶してきた。
「おっ、おはよう。」
「おう。」
「……ふっ」
「かっ!和仁!な、なに笑ってんだよ!」
「イヤ、ごめんごめん。ふたりともぎこちちなさ過ぎて、なんだか面白くて。」
恥ずかしさで顔を真っ赤にした宗也と照れ臭そうに視線を壁へと向ける涼。そして、そんなふたりを見て、楽しそうに笑っている和仁。事情をなにも知らない人間から見れば、彼らが知り合って僅か三日目だとは到底思えないだろう。
「じゃっ、じゃっ、じゃあ!」
動揺して上手く会話を切り上げられなかったのであろう宗也を見送ると、ずっと笑っていた和仁が口を開いた。
「あれでも、宗也なりに、気を遣ってるんだ。わかってやって。」
真面目な発言とは裏腹に、目元にはまだ、さきほどの笑いが残っている。
「和仁、お前は宗也のお母さんか。」
「それ、昔からよく言われるよ。」
黒縁眼鏡の奥には、笑い切ってすっきりした表情の和仁が居た。
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