三礼目 仲間

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 入学から三日経ち、部活について、自分の中で答えが出た涼は、改めて、三人のことを考えていた。  宗也はまぁ、勧誘される中で薄々感づいてはいたが、どうやら思ったことをそのまま口にする性格らしい。そして、休み時間の度に、廊下で聞き覚えのある声がすると思って見てみると、ツンツン頭がピョンピョン上下に揺れている。いつ見ても、毎回違う奴らと騒がしくつるんでいるのだ。誰よりも背が低い宗也は、クラスを問わず皆に可愛がられ、時にはおもちゃにされ、誰からも好かれているように見えた。  一方、和仁は、クラスの中でも、比較的落ち着いていて、男子ばかりに囲まれ騒がしくしていた宗也とは対照的に、女子からよく話しかけられていた。色白な肌が、やや切れ長な目にかけられた黒縁眼鏡の知的な雰囲気を程よく引き立たせている。ああ言うタイプの人間が、インテリ系イケメンと、女子から呼ばれるのかもしれない。  部活の外でも、宗也にずっと、べったりなのかと思っていたが、意外とそうでもないらしい。とは言え、なにか仲間内で盛り上がる度に、宗也が和仁の名前を呼ぶので、あれでは、他の奴らからも、宗也の母親認定をされても、仕方がないように思えた。てっきり、和仁の方が、一方的に宗也のことを気にかけている過保護な性格なのかと思っていたが、そうとは言い切れないようだ。  秋の姿は、宗也の近くで、話を聞いているのを一度目にしたけれど、それ以外は、隣のクラスということもあって、放課後まで見かけることはなかった。というか、いかにもムードメーカーである宗也のせいで、秋に対して暗い印象を抱いてしまいそうになるが、むしろ、宗也の方が異常であると、ふと我に返って気が付いた。   「進学クラス?」 「そうだよ。うちの学校は全学年、一組は進学クラスって決まってるんだ。なに、宮瀬、もしかして知らなかったの?」 「嗚呼。」  今週末から、ゴールデンウイークだということに気が付いた涼は、クラスメイトの一人が口にした「でも、進学クラスの奴らは授業あるんだろ?」という言葉に引っかかりを覚えた。  周りの奴らは二年なので、当然、学校独自の規則を熟知している。こういう知らないことは、なるべく早く知っておいて損はない。 「進学クラスか。」 「やっぱ、転入試験も進学クラスはかなり難しいんだろ?」  まぁ、その質問は転校生の涼にしか出来ないのだろうけれど、涼が普通クラスに来ている時点で、それを訊くのは失礼だとは思わないのだろうか。宗也と言い、このクラスメイトと言い、どうやらこの学校には無粋な奴が多いらしい。 「イヤ、俺、進学クラスは受験してないから。ってか、一組が進学クラスってのも、たった今、初めて知ったし。」 「そうなんだ。なんかごめん。」  涼への謝罪直後、気まずくなったのだろう。そのクラスメイトは、足早に友達のもとへと去っていった。
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