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「で、オレがせっかく地図を書いてやったのに、結局、昨日は、ふたりして辰に会わなかったのかよ!!」
「嗚呼、すっかり忘れてたわ。」
「オイッ!」
昼食のコロッケパンを片手にした宗也の声が教室中に響き渡る。前の席の人間を退かし、椅子の向きを変え、後ろにある涼の席に、宗也は、自分の昼食を大きく広げていた。
一方の涼は、宗也の扱いに慣れてきたようで、軽く返す。
「いいじゃねーか。今日、全員で行こうぜ。そもそもアイツも、茶道部員なんだろ?」
「そうだけれドモ!!」
「なら、その方がいいだろ。」
涼の隣の席を借りて食事していた秋は、ムッとした様子だ。
「僕は……、かっちゃんが何も相談してくれなかったのが、不満。」
「確かに、辰って、妙に和仁贔屓だったよなぁ~。」
「そうなんだ?」
秋や宗也の話を、涼に鵜呑みにされては困るので、
「それは、学級委員の集まりで、一緒に活動してたからだよ。」
と、和仁も反撃する。
けれど、
「……でも、購買のパンを半分こって、普通しない。」
「そうそう!!オレ、あれ、地味に羨ましかった!」
「もらうなら、パンより、京都の老舗和菓子屋の干菓子とかが良いな、俺は。」
どうやら秋も宗也も、それどころか、涼までもが、和仁の意見に賛同してはくれないようだ。
「相場が違いすぎて、性格出るね。」
仕方がないので、話の方向性を変えようと試みたが、
「干菓子なら、オレも食う!」
「……僕は、もみじ饅頭がいいな。」
そんな必要は、無用だった。
和仁と視線が合った涼が口を開く。
「で、綾波は、なんで学校に来なくなったんだ?」
涼をはじめ、三人の視線が和仁に集まる。
「涼は、うちの学校のクラス分けシステムについては、知ってる?」
「嗚呼。それって、一組が進学クラスってやつだよな?」
「そう。一組は進学クラス、その他のクラスは標準クラス。」
「へぇ~。」
「『へぇ~』って。俺らが入学する前から、この情報うちの学校のホームページに載ってるよ、宗也。」
「要するに、その辰って奴は、進学クラスに居たんだな?」
このままでは本題がなかなか進まないので、涼は、華麗に宗也をスルーした。
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