四礼目 雨よ上がれ

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四礼目 雨よ上がれ

 小春日和。正しく、辰たちの高校入学式当日は、そんな日和だった。【綾波(あやなみ) (たつ)】は、第一志望校だった真行高校の進学クラスに、首席で合格した。  憧れだった紺色のブレザーに袖を通し、お洒落な和菓子屋を通り過ぎ、校門を(くぐ)り抜ける。首席合格者は、入学式で新入生代表の挨拶をする。このまま首席をキープして、国公立大学へと進学することが出来れば、辰は、両親の希望も叶えることが出来る。  青年にとってそれは、やる気と希望に満ち溢れた春だった。 (クラスメイト達も、皆、勉強への熱量が溢れてる奴らばかりだな。)  入学早々、辰はそう思っていた。  授業で解らないことがあれば、お互いに教え合う。毎日が充実していた。自習時間を増やせば増やすほど、面白いほどスラスラと演習が解けるようになり、初めは、親の為だった勉強が、やがて辰自身、充実感を感じるものになっていった。  高一の一学期末。初めてクラス順位が発表された。九十点台の科目が多かったから、達成感を感じていた辰。  結果は、一位だった。 (よっしゃ!)  けれどその翌朝、学校に着いたら、辰の椅子は、教室にはなかった。
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