49人が本棚に入れています
本棚に追加
「数Bと英会話と、後、現代文に化学Ⅱ……って、ほぼ半分じゃねーか!」
「うん。流石に、九科目中四科目とか、もう、どうしようもないよね。」
結局、宗也は、試験後も、涼と和仁に叱れている。
「待ってくれ。現代文と化学は、赤点回避まであとちょっとだったんだよ!」
「ともかく、強制退部を回避しないと。」
「強制退部?なんだそれ。」
「涼、知らなかったのか。うちの学校は、補習後の再テストで、五十点以下だと、部活をやってる生徒は、強制退部させられるんだよ。」
「はっ?聞いてねーぞ、それ。」
「ごめん。てか、転入試験をパスしてる時点で、涼には関係ないと思ってたんだよね。本音を言うと。」
眼鏡の奥で、にこやかに微笑むその顔は、やはり、ドSのそれだった。
起こってしまったことは仕方がないので、目の前で、部室の畳に突っ伏している宗也へと視線を戻す。
「で、現実問題どうする?」
和仁は、目を細め、涼の方を見て返した。
「四科目赤点は、過去最高だけど……。誰か一週間で、宗也にも理解できるくらい解り易く勉強を教えてくれる人、いないかな……?」
「俺も今回教えたぞ?それに、自習ならともかく、コイツの理解力に合わせるなんて、余程内容が理解出来てないと無理だろ。もはや勉強のプロみたいなやつじゃないと。」
涼の言葉を最後に、沈黙が続く。勉強が得意で、理解力と集中力の乏しい宗也に、根気強く教えてくれる人でなければならない。
突っ伏していた宗也がため息をついたその時、これまで一言も発さず、宗也の答案を見つめていた秋が、口を開いた。
「……辰ちゃんに頼もう。」
最初のコメントを投稿しよう!