四礼目 雨よ上がれ

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 その頃、暖房を付け、ほんのり暖まってきた辰の部屋では、辰が、口元を手で抑えて、宗也の回答を見つめていた。 「ふっ、理系科目の数Bと化学Ⅱはともかく、英会話と現代文のテストはっ、もう無理。ふっ、くくっ!もうこれ、笑わせにきてるとしか思えないんだけども!」 「なっ!そんなことねぇーよ!!」  真っ赤な顔をして全否定する宗也。 「【For here or to go.】が、【For hair】って、これじゃあ、【店内で召し上がりますか?】が、【頭へ向けて召し上がりますか?】って、急に哲学みたいな話になっちゃうから!!」 「っ。」 「それに、【敵を駆逐する】の読みが、【敵をチクチクする】になってるしっ、くくっ、もう限界!笑うから!コレは!!」 「そっ!それは!勢いで!!」 「嗚呼―。久しぶりにこんな笑ったわ。解ってるよ。宗也の回答、問題文ろくに見ずに回答したんだろうなって、間違い多いから。くっ、やべっ、笑い過ぎて、脇腹痛くなってきた。」  目元に溜まった涙を拭いながら、満面の笑みで、辰はお腹を抱えて笑っている。宗也の顔は、変わらず真っ赤だが、本当のことなので言い返せず、唇を尖らせていた。  これでもかというくらい笑い通した後、辰は、まだ口元に笑みを携えて、宗也の目を見据えた。 「俺の全力は尽くすけど。とりあえず、宗也は焦らず、確実に確認をしてから、回答欄は埋めること。あと、漢字と化学式、数学の公式は、今日中に覚えること。出来なかったら、夕飯抜きな。」 「なっ!飯抜きは、ヒデーだろ!オレ、今まで一度もそんなこっ「茶道部。廃部になっても、いいのか。」」  先程まで、辰の笑いが響き渡っていたのが嘘のように、ふたりは黙り込む。 「絶対に、五十点以上、取らせてくれ。」  宗也の目に、グッと力が入った。 「嗚呼。」  久しぶり湧いた宗也のやる気に、辰の目にも、力が入った瞬間だった。 「あと十分後に、試験範囲の漢字、再テストするから。」 「ハ、ハイッ!!」
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