四礼目 雨よ上がれ

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 模擬試験の結果は、数Bが六十二点、化学Ⅱが六十点、英会話が五十八点、現代文が五十六点と、全科目とも、再試験のボーダーラインである五十点を超えていた。  翌朝、再試験当日。前日、模擬試験が終わった時間が夜の十時近かったこともあり、四人とも辰の家に泊まっていた。  朝の支度を四人がしている中、自分の部屋からずっと出て来ない辰。 「朝はね……。苦手なのよ、あの子。最近は、宗也くんのおかげで、自分から起きて来てたんだけど……。」 「「「「………………。」」」」  四人は、眉根を少し寄せて、押し黙った。返事をしないことは、辰のお母さんに、多少気は引けたが、何を言えばいいのか、何と答えるのが正解なのか、誰ひとりとして解らなかった。けれど、宗也は、この一週間、教えてもらった全てを出し切ることが、辰の為になる。そう信じて、おばさんに深くお辞儀をして、学校へと向かった。三人も、その後に続いた。 「あの子達っ……。」  続きは紡がれなかった辰のお母さんの心の声が、四人の心に、しっかりと届いた。辰にも、その想いが、届いていると信じて。
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