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『ダダダダダダダダ!』
物凄い勢いで、部室へ走ってくる音が聞こえたかと思うと、
「オレ!やった!受かった!!」
顔中に皺を寄せた満面の笑みで、宗也が部室へと飛び込んできた。扉を開けた勢いのまま部室へと入り込んだせいで、そのまま床に敷かれている敷石へと顔面から突っ込みそうになるのを、慌てて涼と和仁のふたりがかりで抱き留める。
「危ねーよ!」
「これ以上、心配事増やさないで。宗也!」
「わっ、わりいっ!」
和仁がそっと眼鏡の位置を正した。
「もう、本当に宗也って心臓に悪いよね。」
「そうだよ。宗ちゃん。」
和仁に続いて秋にも指摘を受けたのが気に入らないのか、宗也は、むくれている。
「……ふっ。」
そんなガヤガヤと騒いでいる四人のもとへ、辰がやって来た。
「おかえり!!」
辰自身、色々と思うところはあるのだが、宗也に先を越されてしまったので、返す言葉はひとつだけ。
「ただいま。」
冷やかされても、文句の言えない状況なので、多少、照れ臭さも交えて言ったつもりだったけれど、またしても、宗也によって、いつの間にか組まされていた円陣で、それすらも阻まれる。
「これで全員揃った!!やるぞっ!行くぞ!真行高校茶道部!!エイ、エイ、オオォー!!」
「「「「オォー!」」」」
宗也の後に、四人の声が続く。
(行くぞって……、どこにだ?)
そう宗也以外の全員が思ったが、それは、誰も口にはしなかった。
「おっ、気合い入れが聞こえる。この辺りって、文化部の部室があるんだっけ?」
「……嗚呼。あそこは茶道部の部室だよ。」
「って、よく知ってるな。流石、生徒会長!」
「まあね。……彼、もう戻って来ちゃったのか。…………早かったな。」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、早く梅雨が終わらないかなって。」
梅雨の終わりと共に、新たな季節が訪れようとしていた。
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