五礼目 過去からの影

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五礼目 過去からの影

   久しぶりの快晴に、五人は、全員揃っての休暇を楽しむことにした。待ち合わせは、午前十時に駅前の噴水前。待ち合わせひとつにおいても、性格が出るものだから、面白い。  一番初めに着いたのは、和仁だ。待ち合わせ時刻のちょうど十五分前。それから、およそ十分前になると、涼と秋、辰がほとんど変わらない時刻でやって来た。その一方で、定刻になっても、宗也は姿を現さない。宗也が四人の前に現れたのは、待ち合わせ時刻を十分ほど過ぎた頃だった。 「お前、去年遊んだ時から、なんも変わってないのな。」  数ヶ月ぶりに遊ぶ辰に突っ込まれる。 「た、偶々だよ。」 「いつもだよ。」  否定する宗也と肯定する和仁の声が揃った。 「ふっ、ところで、今日はなにするんだ?」  苦笑する辰の質問に、 「ショッピングモールで、買い物。で、買い物が済んだら適当にご飯食べて、あとはまあ、その場の流れで、って感じかな。」  説明しながら、一歩前に出て歩き出した和仁。その姿は、水色のYシャツにベージュのチノパンと暗めの茶色い革靴を合わせた爽やかなコーディネートだ。トレードマークとも言える黒縁眼鏡ともよく似合っている。さしずめ、爽やかな好青年といった装いだ。  和装姿か制服姿が多い彼らだが、流石に、普段から和装で外出しているわけではない。とは言え、遊ぶと言っても、学校帰りに制服で寄り道することが主だったので、お互いに私服姿はあまり見慣れていなかった。  ショッピングモールに入った途端、明らかに対象年齢が幼稚園児くらいに見える館内に設置されたポップコーンマシーンに、宗也が釘付けになった。結局、目を輝かせて、塩味のポップコーンを買った。  アパレルショップを適当に見て、買ったり、買わなかったりを繰り返している内に、本屋が一軒あったので、五人は立ち寄った。  趣味や専門誌の一角の中に、茶道の専門誌が幾つか置かれている。そのうちの一冊を、そっと手に取った和仁は、皆も興味があるだろうと、すぐ傍に居た涼と秋に声をかけた。 「この雑誌、前に何度か買ったことあるんだけど、この人って、涼が前に居た高校の先生じゃない?」  表紙には、【茶道界の貴公子、天道章吾!巻頭二十ページ大特集!!】と書かれている。 「嗚呼。」 「……。」
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