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その様な呪文の為であろうか、
鏡に写った私の顔が、自分の顔に思えなくなってきた。
他人では無いが、以前の自分の顔がはっきりと思い出せないのである。
この様な顔だったと思ってはいるのだが、違う様な気もする。
自分が自分で無いような、鏡を見る度に
「知らない他人が私を観ている!」
と、云う感情に襲われてきたのだった。「
何だろう?この顔は、これが私か!」と感じる事も頻繁に起こり
鏡に向かって自問したその時である。
鏡に写った顔がニヤリと、笑ったのだ。
私が、笑ったのではない筈である。私は深刻な表情でいた筈だ!
そんな馬鹿な事は無いと、鏡を凝視してみたが、
鏡に写った姿は誰のものか判らないと、感じていた。
目の錯覚か、それとも疲れている為の幻想か!と思い直し、少しばかりの恐怖を感じたが、私はまだ強くは気にも留めずにいた。私は確かめたかったのだ。馬鹿げた事だと知りながら
鏡に写る他人がどの様な人物であるかを。
私はこの様な健康状態になっても、鏡に向かって
「お前は誰だ!何処から来た?」と、問いかける事を辞め様とはしなかった。
それは、私の中に棲みついた別の誰かに、操れている行動であったのかも
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