第14章 光の乙女

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第14章 光の乙女

 14ー1 世界  キルハ様の告白をきいたわたしは、ルシーディア様に伝言用の魔方陣を飛ばした。  仔細は、省いてとにかく遠い異国の地に生まれ落ちた『魔王』のことを伝えた。  ルシーディア様からは、すぐに返事がきた。  『明日、王宮で待つ』  わたしは、翌日サニタリア王立魔法学園を休んでキルハ様とライモンドを伴って王城へと赴いた。  わたしたちは、王宮の謁見の間の前室で長い時間待たされることになった。  「人を呼びつけておいて待たせるなんて最低」  キルハ様が言うと、壁際で待機している王宮の騎士たちに緊張が漂う。  わたしは、慌ててキルハ様に話を振った。  「今もイリハ様とは魂で繋がっているのですか?」  「ええ」  キルハ様が答えた。  「だけど、もう何週間か前からは、イリハの意識は霧がかかったようになって私を拒んでいるわ」  「それって、イリハ様が魔王になってしまったからなの?」  わたしは、小声でキルハ様に訊ねた。  キルハ様は、わたしに珍しく自信なさげに応じた。  「たぶん、そうだと思う。ただ、イリハの意識が私を拒むなんて考えられないのだけど」  キルハ様たちは、特別な双子だった。  子供の頃からお母様と双子たちは、生きることに必死だった。  ほんとに酷い環境でキルハ様も一人だけなら一日だって耐えられなかった、と言っていた。  お互いにお互いがいる。  それだけで二人は生きてこられた。  わたしは、二人ほど過酷な環境ではなかったけれど、なんとなく理解できるような気がした。  わたしにもマオがいてくれた。  だから、わたしも生きてこられた。   そんな二人が引き離されたのだ。  キルハ様たちは、どんなにか苦しんだことだろう。  半身を失ってしまったのだ。  いや。  失ったのならまだましかも。  なくなってしまったなら諦めることもできたのかもしれない。  お互いの気配を感じ合いながらも再会することは叶わない。  それでも。  キルハ様は、必死に願い続けた。  弟と無事に再会することを。  それが叶わなくなってしまった。  キルハ様にとっては、もう世界などどうでもいいのかもしれない。  
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