第1章 お化けの姫君

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 1ー11 騎士  それから領主様は、わたしに詳しく話をしてくれた。  わたしが森で助けたのは、この国の聖女アニノマス様だった。  聖女というのは、この国を支える柱のようなものだ。  聖女の祈りで国は守られている。  「アニノマス様は、お前にいたく感謝されていたよ。もしもお前が生き延びたなら王都の自分のもとを訪れるようにとのことだ」  はい?  わたしがぽかんとしていると、領主様は、話を続けた。  「なんでもアニノマス様は、お前を騎士としてお側に召し抱えたいと仰っていたよ」  騎士?  わたしは、さらにぽっかーんだった。  わたしが騎士?  聖女様の?  にわかには信じがたい話だ。  しかし、領主様の様子では本当のことらしい。  だが。  いくら聖女様の直々のお召しであっても得体の知れない孤児をいきなり召し抱えることはできないので、とりあえずしばらくは待っているようにとのことだ。  そういうわけで、わたしは、しばらくこの領都の領主様のお屋敷で暮らすことになった。  ここで騎士に必要な知識とかを学ぶようにと領主様は仰った。  「我が領地から聖女の騎士を出せるとは光栄だよ」  領主様は、ほくほくだ。  だが、わたしは、考え込んでしまった。  そんな話、本気にしてもいいの?  ちらっとマオを見たら、マオは、こくりと頷いた。  「カイラならちゃんと騎士の勤めをはたせるよ」  簡単そうにいうな。  それからわたしは、しばらく領主様のお屋敷で暮らすことになった。  領主様は、わたしのために何人もの家庭教師をつけてくださった。  家庭教師たちは、わたしに基本的な学問やら貴族としての知識やらを教えてくれた。  わたしは、ここで初めて文字を習った。  もちろん、騎士としての鍛練もあった。  子供のない領主様夫妻は、わたしにたいそうよくしてくださったのでわたしも一生懸命にその思いに答えるべく頑張った。  そんなわたしのもとに聖女様から手紙がきたのは、半年がたった頃のことだった。  手紙に目を通した領主様は、わたしに笑顔で伝えた。  「聖女様は、お前にサリタニア王立魔法学園にて騎士の研鑽を積むようにと望まれている」  はい?  わたしは、マオのことをぎゅっと抱き締めた。  サリタニア王立魔法学園?  この孤児のわたしが貴族のための学園に通うんですか?  
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