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第2章 聖女の騎士
2ー1 家族になる。
サリタニア王立魔法学園に入学するにあたり、わたしは、領主様の養女となることになった。
領主様は、アルタス・ルドクリフ辺境伯という方で実は、とてもこのメルロープ王国にとって重要な方なのだということをわたしは、家庭教師たちから教わった。
アルタス様とその奥方様のウルティア様には、子供がなく、そのせいかわたしをたいそうかわいがってくださった。
わたしが神の加護を持たないと知ってもお二人の優しさは変わらなかった。
というか、神の加護を持たないにもかかわらず魔法のような力を使えるわたしにアルタス様は、興味を持たれた。
家庭教師の魔道師は、わたしのことを『悪魔つき』ではないかと気味悪がったけれどアルタス様は、そうは思われなかったようだった。
「カイラは、聖女アニノマス様が初めて自ら騎士にと望まれた者だ。『悪魔つき』などということはありえない」
わたしは、アルタス様に問われてわたしの力を説明しようとしたが、この世界には、精霊という存在がまだ知られていなかった。
かなり古い文献には、精霊の力を記した記述もあるようで、魔法師でもあったウルティア様が助け船をだしてくださった。
「数百年前には、こういった自然の力を使う者もいたようですから、たぶん、カイラもそういった力を使っているのでしょう」
だが、魔道師であるクルトフ先生は、納得することはなかった。
彼は、常にわたしの言動に目を光らせていてわたしの力の秘密を暴こうとしていた。
そんな彼でもサリタニア王立魔法学園の入学までの間には、少しは、わたしを受け入れてくれるようになっていた。
「まあ、例え『悪魔つき』であったとしてもこの者は、悪い人間ではないようですな」
それがクルトフ先生の結論だった。
わたしは、サリタニア王立魔法学園への入学までさらに半年、ルドクリフ辺境伯のもとで暮らすことになった。
その間に、わたしは、基礎的な学問や貴族としての礼儀作法、騎士としての剣技などを叩き込まれた。
それまでまったく勉強なんてしたことがなかったから、とてもとまどってしまったが、嫌ではなかった。
家庭教師たちは、みな辛抱強く丁寧に教えてくれたし、アルタス様もウルティア様もまるで本当の娘のようにわたしを大切にしてくださった。
わたしは、どうやら音楽が好きなようだ。
特に貴族のたしなみとか言われて習ったティンパロという楽器に才能があるようだった。
ティンパロは、並べられた鍵盤を指で押さえたら音が出るという楽器だ。
わたしは、習い初めて数ヵ月で家庭教師のティンパロ奏者であるラティマ先生が驚くほどに上達した。
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