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13ー11 暗黒大陸
弟が魔王になるのを防ぐためにキルハ様が聖女にならなくてはならなかった?
わたしは、信じられないものをみるようにキルハ様を見つめていた。
キルハ様は、わたしたちに話し始めた。
「私と弟のイリハは、父に捨てられた母と一緒にムスタファ王国のスラムで暮らしていたわ。毎日、お腹をすかせていたし薄汚れた格好をして過ごしていたけど私たちは、幸せだった」
キルハ様は、続けた。
「2年前に母が死んだ。それがすべてを狂わせてしまったの。祖父であるダグランディス公爵は、聖女の素質がある私だけを引き取り、弟であるイリハのことは、捨てようとした。私は、どうにかして聖女の座を勝ち取るからと言って祖父に頼んで弟を一緒に引き取ってもらおうとしたの。けど、祖父は」
ダグランディス公爵は、キルハ様のみを引き取り、弟のイリハのことを引き取るふりをして奴隷商人に売ったのだという。
そのことを知ったキルハ様は、家を出ていこうとした。
だけど。
「あいつは、言ったのよ。私が聖女になればすぐに弟を救いだしてくれるって」
だから。
キルハ様は、なりふりかまわず聖女になろうとしたのだ。
なぜならキルハ様の弟であるイリハは、魔王の種を持つものだったから。
「もしもイリハが闇に染まることがあればこの世界は、終わる。だから、私は、必死に頑張った。でも、ダメだった」
キルハ様は、苦しげに告げた。
「私があなたに破れて国を追われ、この国で罪人として苦しみを与えられたことによってイリハは、魔王として覚醒してしまった」
「キルハ様?」
わたしが問うとキルハ様は、答えた。
「私とイリハは、常に魂で繋がっているわ。私の受ける苦しみはイリハの苦しみ」
そして。
イリハは、魔王になった。
「イリハは、魔界国に売られたの」
キルハ様は、語った。
「魔王が生まれた以上、もう、この世界は、終わり。イリハがこの世界を滅ぼすから」
「どうすればいいの?」
わたしがきくとキルハ様が答えた。
「魔王を倒すこと。それしかもう、世界を救う方法はない。だけど、もう、この世界には勇者は、いないの」
「マジかよ・・」
黙って話をきいていたライモンドが呟く。
「どうしたら世界を救えるんだ?」
「それは、簡単」
キルハ様が応じた。
「暗黒大陸に行き魔王を倒せばいい」
いや。
簡単に言わないでください。
わたしは、キルハ様を凝視していた。
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