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14ー2 聖女の敵
わたしたちは、何時間も待たされていた。
それはもう、痺れがきれるほどに。
ライモンドもキルハ様ももう帰る気になっていた頃、わたしたちは、謁見の間に通された。
そこには、一段高い場所にある玉座に腰かけたルシーディア様と何人かの男女が待っていた。
「よく来てくれた」
ルシーディア様が声をかけられた。
わたしたちは、その場にひれ伏した。
じきにルシーディア様から顔をあげるようにと命じられてわたしたちは、恐る恐る顔を上げた。
ルシーディア様は、わたしたちに語りかけられた。
「この度、君たちに来てもらったのは、私からのお願いがあるからだ」
ルシーディア様からのお願い?
わたしは、ルシーディア様を見上げた。
ルシーディア様は、わたしたちに告げられた。
「君たちで魔王討伐に向かってもらえないだろうか?」
はい?
わたしたちは、お互いの顔を見合わせていた。
ルシーディア様は、続けられた。
「もちろん、君たちを輔佐するものたちも同行させるつもりだ。魔界国までの旅費も全て私が用意する」
「この国からの命ではなく、ルシーディア様からのお願い、なんですか?」
わたしが訊ねると、ルシーディア様は、頷かれた。
「そうだ。だから、本来、なんの強制力もないし、旅の途中で嫌になれば帰ってくることもできる」
「でも」
キルハ様が口を開いた。
「それでは、魔王は倒せない」
「君たちが無理ならもう、誰も倒すことができないのだろう。そのときは、仕方ない。甘んじて滅びようではないか」
はい?
わたしは、耳を疑った。
どういうこと?
「なぜです?」
わたしは、ルシーディア様に問いかけた。
「なぜ、国王代理として命じられないのですか?そうすれば話しははやいのに」
「カイラ。私には、君たちに必ず魔王を倒せなどとはいえないよ」
ルシーディア様が困ったような顔をされた。
「きっと君は、私が命ずれば一人でも魔王を倒すために旅立つのだろう。だけど、私にはそんな命令は出せない。いや、出したくないんだ」
「ルシーディア様」
わたしは、少し固い声で告げた。
「一言命じてくださればわたしは、どこまでも行ってあなたの敵を倒します」
なぜなら、この国の敵は、聖女アニノマス様の敵だからだ。
聖女の敵を殲滅する。
わたしは、そのためにここにいるのだ。
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