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2ー4 マオ
アルタス様は、大きくなってきたマオを竜舎に住まわせる方がいいのではと仰った。
わたしは、何事にも従順だったが、このことだけは逆らった。
マオと離れるなんて!
わたしは、マオを他のドラゴンたちと一緒にすることはできない。
「なら、あたしが小さくなればいいんじゃない?」
マオはあっけらかんとして言うと、しゅしゅしゅっと縮んでいった。
子猫ぐらいの大きさになったマオをみてアルタス様もわたしとマオが今まで通りに一緒にいることを許可してくれた。
「マオ、小さくなれたんだ?」
わたしが問うとマオは、えっへんと胸を張って答えた。
「最近、魔力が漲ってきて変化できるようになったのよ」
子猫サイズになったマオは、わたしの肩によじ登るとにんまり笑った。
「いつだってあたしは、カイラのそばにいるわよぉ」
それは、わたしにとってすごく心強いことだ。
だって、マオは、わたしが生まれたときからずっと一緒にいてくれた唯一の存在だから。
かつて精霊界に生きていた頃、わたしは、いつも一人だった。
精霊王であるお父様は、政務で忙しかったし、お母様は、わたしが生まれてすぐに亡くなっていたし。
わたしは、体が弱くていつも部屋にこもっていることが多かったので、周囲の人たちからは、謎の姫君とか噂されていた。
こちらの世界に転生させるとき、きっとお父様は、二度とわたしが一人ぼっちにならないようにってこのマオを与えてくれたのだろう。
わたしは、精霊王であるお父様の愛情に胸が暖かくなる。
今生でわたしは、孤児でしかも誰からも嫌われていた。
それでも生きてこられたのは、マオがいてくれたからだ。
「ありがとうね、マオ」
わたしがそっと囁くと、マオは、わたしに頬擦りしながら答えた。
「どういたしまして」
わたしたちは、お互いに顔を見合わせて微笑みあった。
「しかし、竜と契約しているとは」
もと騎士の剣の師匠であるギリウス先生は、感心したようにいった。
「もう、立派な竜騎士だな」
竜騎士というのは、竜と契約して騎乗して戦う騎士のことだ。
この竜と人がともに暮らしているメルロープ王国において竜騎士は、もっとも尊敬される存在だった。
「わたしが竜騎士!?」
びっくりしているわたしにマオがきっぱりと言いきった。
「当然でしょ」
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