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2ー5 ダンス
サリタニア王立魔法学園に入学する季節がやって来る頃には、わたしは、一応貴族の子女の素養を身に付けていた。
騎士としては、かなりの実力とギリウス先生に太鼓判を押されていたし、魔法も精霊たちの力を借りることで師匠であるクルトフ先生に肉薄していた。
特に剣技は、たまにギリウス先生から一本とれるぐらいに上達していた。
というのも、アルタス様からいただいた剣のおかげだ。
わたしは、アルタス様からいただいた剣に精霊を降ろしたのだ。
剣の精霊オリタニスを降臨させた剣は、控えめにいっても聖剣だった。
といってもオリタニスの影響で剣は、もとの姿からかなり形が変わっていたのだけれど。
普通の業物の剣が、今では、わたしの背丈ぐらいの大きさの巨大な剣に変化していた。
他の人が手にすると持ち上げることもできないぐらいに重いオリタニスだったが、わたしが持つと紙のように軽かった。
しかも、オリタニスを介してわたしは、精霊の力を存分に操ることができた。
まさに最強の剣だ。
こんなふうに騎士としては、順調に成長しているわたしだったが、唯一苦手なものがあった。
それは、ダンスだった。
ダンスの先生は、ラティマ先生が兼任してくれていたのだが、どうしてもわたしは、うまく踊れなかった。
ダンスの練習の相手は、主にアルタス様の執事であるダニエルさんがしてくれていたのだが、わたしは、ダニエルさんにはたぶん嫌われていることだろう。
どうしてもダニエルさんの足を踏んでしまうのだ。
その度に、ダニエルさんは、にっこりと微笑んでわたしにいってくれた。
「大丈夫でございますよ、カイラお嬢様」
いやいやいや!
大丈夫じゃないでしょ?
最近、ダニエルさんの靴が踏まれてもいいように固い靴に変わっていることにわたしは、気づいていた。
このままじゃ、まずいよね?
踏まれること前提で踊ってくれる人なんていないだろうし。
サリタニア王立魔法学園は、貴族の子女のための学校なので度々、ダンスを踊る機会もあるのだとアルタス様とウルティア様が話してくださった。
「特に、学期末のパーティは、大切よ、カイラ」
ウルティア様が身を乗り出して力説した。
「このパーティで誰と踊るかによって将来が決まるといってもいいのよ」
なんでもウルティア様が二歳年上のアルタス様と初めて踊ったのがこのパーティだったらしい。
それまでお互いに親の決めた婚約者がいた二人だったが、この後、紆余曲折の末に結ばれたのだという。
パーティ効果すごい!
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