第1章 お化けの姫君

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 1ー3 神の祝福  わたしが14歳の年、いろんなことが変化した。  主にルイーズにとって。  この国では、14歳になったら創世の女神であるアルティナの御前で神託を受けなくてはならない。  そのとき、神からの言葉を受けとる。  その言葉次第では、運命が変わることもあるぐらいすごいことなのだ。  そこで、ルイーズは、炎の神の祝福を受けた。  つまり、炎の魔法が使えるってこと。  これって、かなりすごいことらしい。  シスターたちも色めきだった。  ルイーズは、鼻高々。  でも、続いて神託を受けたわたしは、気まずかった。  ああ。  神様、わたしも何かいいものが与えられますように!  でも、わたしの祈りも虚しく神官は、告げたのだ。  「この者には、なんの加護も与えられてはいない」  マジですか?  たくさんの神様がいるっていうのに、わたしには、なんの加護もなしですか?  ルイーズが高笑いする。   シスターたちは、諦めたようなため息をつくし。  わたしは、顔が熱くなるのをこらえてずっとうつむいていた。  泣くものか。  例え神様から愛されてなくってもわたしは、平気だ。  孤児院に戻ってもわたしは、平然とした顔をしていた。  みんな、こそこそとわたしを遠巻きにして話していた。  別に気にしない。  わたしは、マオと一緒にいつものように台所の裏にまわって芋の皮を剥いた。  すごい量だし。  ここにいる全員が1日食べる芋だ。  半端な量じゃない。  ほんとは、これはわたしとルイーズの仕事だ。  だけど、ルイーズが手伝ってくれることはない。  わたしは、一人で黙々とナイフで芋の皮を剥き続けた。  単純作業は、嫌いじゃない。  でも、この芋の汁は、手につくと荒れるのだ。  だから、わたしの手はいつもがさがさだ。  あっちこち切れて血が滲んでいる。  マオは、わたしの指先をざらざらした舌先で嘗めるとため息をついた。  「あたしが人形になれたら手伝えるんだけど」  竜だって年をとると人に化けることがある。  でも、まだ生まれて間もないマオは、そんな芸当はできない。  でも、わたしは、マオの気持ちが嬉しくって。  だから。  わたしは、芋の皮を剥きながら知らない内に泣いていた。    
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