第1章 お化けの姫君

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 1ー4 別れ  「どうしたの?」  マオがわたしを覗き込んで心配そうに訊ねた。  わたしは、例え、誰に何をされたって泣いたりしない。  それは、わたしの問題を解決してはくれないから。  それなのに。  わたしの涙は、止まらなかった。  「あらあら」  しゃがみこんでいるわたしの頭上でルイーズの嬉しそうな声がきこえたからわたしは、慌てて涙を拭った。  でも、時はすでに遅し。  わたしが泣いているのを見てルイーズは意地悪く微笑むとしゃがみこんでわたしのことを覗き込んだ。  「ねぇ、カイラ。あなたに報告しないといけないことがあるのよ」  わたしは、ルイーズを無視してひたすら芋を剥き続けた。  ルイーズは、ちょっとイラッとしていたけどすぐに話を続けた。  「神託の後、すぐにあたしに貰い手が見つかったのよ」  「ほんと?」  わたしは、手を止めてルイーズを見た。  ルイーズは、にんまりと笑った。  「そうよ。あたし、貴族になるのよ」  マジか。  わたしは、複雑な気持ちがしていた。  ルイーズがここからいなくなる。  この鬱陶しいやつがいなくなればせいせいする。  そう思うと同時に胸に冷たい風が吹き込むような気もしていた。  「おめでとう、ルイーズ」  わたしは、できるだけ平静を装って告げた。  「さようなら」  「あら、素っ気ないのね、カイラ」  ルイーズがふん、と鼻を鳴らした。  「もし、どうしてもっていうならあんたをあたしのメイドにして欲しいって頼んであげてもいいのよ?」  「いらない。そんなこと」  わたしが答えるとルイーズは、にやりと笑った。  「ほんとにあんたっておかしな子よね。他の子ならみんな、何と引き換えにしてもいいからってあたしに頼んでくるのにさ」  「わたしは、いいから」  わたしは、ルイーズに告げた。  「誘うなら誰か他の人にして」  「後悔してもしらないわよ、カイラ」  ルイーズがにやにや笑う。  わたしは、はやくルイーズに消えて欲しかった。  マオは、わたしの後ろに隠れて唸り声をあげていた。  ルイーズは、ご機嫌でわたしに背を向けた。  「おい!カイラ。芋の皮剥くのにいつまでかかってるんだ?」  台所のドアが開いて調理人の中年男が顔を出したがルイーズに気がつくとすぐに慌てて笑顔になった。  「ルイーズもいたのか」  「ええ」  ルイーズがにっこりと微笑んだ。  「最後ぐらいみんなのためにお手伝いしたかったけどカイラがいいって」  
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