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1ー6 魔物の森
ルイーズがいなくなってからしばらくして孤児院でルイウス風邪が流行った。
この風邪は、全身に水泡ができて高熱が出る流行り病だ。
孤児院の子供たちの半分が寝込んでいたけどシスターたちは、医者も呼ばないで自分達の作った薬草酒で治療していた。
だけど、子供たちは、悪化する一方で特にわたしの同室の赤毛のメイサは、酷かった。
顔が水泡だらけになってまるでほんとのお化けのようになっていた。
メイサは、熱にうかされながら泣き出した。
「こんなに醜かったらもう、貴族様にもらわれることなんてできなくなる」
いや。
貴族は、例え醜くなくっても普通にメイサをもらいたがらないんじゃ。
そう思ったけど、わたしは、言葉を飲み込んだ。
「大丈夫だから、しっかりして」
わたしは、メイサに薬草酒をスプーンで飲ませながら励ました。
メイサの看病は、同室のわたしの仕事だ。
わたしは、幸いにもいまだにルイウス風邪に感染することはなかった。
わたしは、悪化していくメイサをみながらため息をついた。
たぶん、このままじゃこの子は助からない。
わたしの見えない友だちがそういっている。
見えない友だちには、ちゃんとした形はない。
ぼんやりとした光の固まりのようなものがわたしに告げる。
それは、心の中にイメージが流れ込んでくるようなものだ。
別の薬草をいくつか煎じて薬を作ればこの流行り病は、完治するとそのお友だちは、わたしに語った。
ただ、その薬草を手に入れるためには町外れにある魔物の森に行かなくてはならない。
わたしは、ため息をついた。
なぜ、わたしがこの子たちのために魔物がうろついている森に行かなくてはならないのか。
この子たちは、みんなわたしを嫌っているし、意地悪だ。
だけど。
わたしは、立ち上がるとそっと部屋を出て孤児院の外へと出ていった。
「森に行くつもり?」
マオがパタパタと飛びながらわたしの後を追ってくる。
わたしが頷くと、マオは、大袈裟に顔をしかめた。
「あんな子たち、どうなったっていいじゃん。森に行くのは危険よ」
「わかってる」
わたしは、そう答えるとどんどん魔物の森へと歩いていった。
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