第1章 お化けの姫君

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 1ー8 騎士と乙女  友だちから分かたれた光に包まれた騎士の体がびくんと跳ねた。  わたしは、友だちのことを信じていたけど、さすがにこの騎士の様子を見るとびびってしまった。  けど、すぐに騎士は、ほぅっと大きな息を吐き出したかと思うと目を見開いた。  「君は?」  「わたしは、カイラ」  わたしは、騎士が起き上がるのを見ると他の倒れている騎士の方へと向かった。  同じように怪我した騎士たちの治療をしていった。  マオは、その間にも魔狼たちを追い払うべく戦っていた。  わたしは、マオの方をちらっとみながら最後の騎士の怪我を治していた。  「ありがとう。助けてもらって感謝する」  髭のちょっと年配の騎士がわたしに頭を下げた。  わたしは、面食らっていた。  騎士に頭を下げられるなんて!  わたしは、ただ、友だちに頼んだだけだし。  騎士たちは、マオが魔狼の群れを追い払うのを呆然とみていたけど、マオがわたしのもとに戻ってくるとはっと気づいて慌てて馬車へと呼び掛けた。  「アニノマス様、ご無事でしょうか?」  すぅっと馬車の扉が開いて中からすごくきれいな女の子が現れた。  うん。  冗談じゃなく、その子が現れると辺りに光が差すのがわかる。  美しい金色の髪をしたその少女は、澄んだ翡翠色の瞳でわたしたちを見回した。  「魔物は、去ったのですか?みな、無事でしょうか?」  「はっ!」  騎士たちが一斉に跪くと頭を下げた。  髭の騎士がその少女の質問に答えた。  「こちらのお方にお力を借りてなんとか魔狼を追い払うことができました」  「そう」  少女がわたしを見つめた。  「ありがとう」  わたしは、低く呻いていた。  こんなきれいな女の子をわたしは見たことがなかった。  わたしがぼんやりと立っていると騎士たちがわたしにそっと声をかけた。  「無礼だぞ!頭を下げなさい」  「かまいません、ドーザ」  その少女は、お供の女の人に手をとられて馬車からふわりと降り立つと音もなくわたしの方へと近寄ってきた。  「私は、アニノマス。あなたのお名前は?」  「わ、わたしは」  わたしは、なんとか声を押し出した。  「カイラ」  「まあ」  アニノマスは、クスッと笑った。  「変わったお名前だこと」  わたしは、喉がつまって何もいけなくて、ただその場に立ち尽くしていた。  そのとき。  「カイラ!」  マオが叫んだ。  その瞬間、背中に鋭い熱のような痛みを感じてわたしは、倒れ込んだ。      
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