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1ー9 異世界転生
わたしは、どこか知らない場所にいた。
そこは、青い、空の中に浮かんだような場所だった。
わたしは、空に浮かんだままで辺りを見回していた。
「サラサリアよ」
空から現れたようなその男の人は、わたしの名を呼んだ。
その瞬間、わたしは、全てを思い出していた。
「ああ、お久しゅうございます、精霊王よ」
わたしは、目の前にいるその男に跪くと頭を下げた。
精霊王は、わたしをそっと立ち上がらせるとわたしの顎に手をかけて自分の方を向かせた。
「もっとよく顔を見せておくれ、サラサリア。我が愛し子よ」
「お父様」
わたしは、お父様に向かって微笑んだ。
そう。
わたしは、精霊王のたった一人の娘サラサリアだった。
だった、というのは、精霊王の愛娘であったわたしは、もうこの世界にはいないからだ。
というか、ここ異世界ですよね?
わたしは、かつてこの精霊界で生きていた。
だけど、わたしは、もうこの世界にはいない。
なぜなら、わたしは、死んでしまったから。
「お父様、なぜ、わたしは、ここに?」
「私は、お前を異世界に転生させたのだよ、サラサリア」
精霊王は、わたしの髪をそっと優しく撫でながら囁いた。
「魔力を体内に吸収しすぎてしまうためにお前は、この精霊界では生きられなかった。だから、私は、お前をもっと魔力の薄い世界へと転生させた」
マジですか?
わたしの頭の中をいろいろなことがぐるぐると駆け巡っていた。
わたしが精霊王の娘?
だけど、同時にわたしの中には、14歳のカイラの記憶があった。
わたしは、すぅっと深呼吸をした。
「そうなのですね。わたしは、もう、ここにはいないのですね」
「ああ」
精霊王は、頷いた。
「こんどこそは、幸せになっておくれ、サラサリア。我々は、ずっとここからお前を見守っている」
わたしの意識が薄らいでいくのを感じる。
精霊王の姿が揺らぐ。
わたしは、手を伸ばして彼の衣をつかもうとしたけれど、もう、彼に触れることは叶わなかった。
「お父様!」
「サラサリア」
精霊王の声がわたしの耳元できこえた。
「いろいろ手違いがあったようだが、私たちがいつも一緒だということは、忘れないで」
ああ。
わたしは、暗い水底へと沈んでいくのを感じていた。
だけど、異世界は、わたしを拒んでいるのです。
お父様。
わたしは。
わたしは、徐々に意識を手放していった。
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