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3週間前、10キロ離れた隣街に2発、ミサイルが落ちた。
雨でも雪でも隕石でもない。ミサイルだ。そんなものが空から降ってくるなんて、信じられる?
最近は3日に一度、避難警報が鳴ってる。
用心にこしたことはないけれど、頻繁過ぎて「狼少年」の話になってる。「またかい」って、感じ。警報すら日常に溶け込んでしまった。
マンション共用部の管球が切れたから、僕は交換品を求めて、ショッピングモールの電気屋さんへ向かう途中だった。
避難警報が街中に流れる。スマートフォンからも、けたたましく注意警報が鳴り響く。
通りを往く人たちは、僕を含めて、皆、平常心、慣れたもんだ。駆けだすこともなく、パニックに陥ることもない。それぞれが目的地へ、通常通りに歩んでいた。
その時だった。
ドーンと地を揺るがす轟音。
咄嗟に、僕はアスファルトの道に這いつくばった。
衝撃が身体全体に伝わって、怖くて、すぐには起き上がれない。
同様に道に伏せた人々が、ゆっくりと頭をあげて周囲を見渡す。
モクモクと青空に黒煙が立ち上るのが見えた。
黒煙は僕が歩いてきた方角からで、もちろん、うちの建物があるわけで。立ち昇る真っ黒な煙からは、嫌な予感しかしない。
避難警報は繰り返し、けたたましく流れていた。
皆が恐る恐る起き上がると、先程とは打って変わって、避難先を求めて右往左往。
「ミサイルだ、またくるぞ!」
「館内は駄目だ、公園へ急げ!」
「早く逃げろ、爆発する!」
声が、悲鳴が罵声が、街中に溢れてた。
僕は黒煙が昇る方向へ、自宅マンションへと向かって、駆けだす。
消防や警察や救急部隊の車両に追い越されながら、僕は数年ぶりに、必死で走った。
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