第1話  コンビニカップル

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 出会った男に対して、「あー今の発言はマイナス1点」などと、最初からマイナス方式の採点を初めてしまう最低な女である。  いくら顔が良くても、中身を好きになれなければ興味はない。  そもそも、いい顔の男が私を好きになることもないのだけど。  異性に好かれるという経験も乏しいため、自分の容姿や性格に自信は持てなかった。  10年前だったら、まだ“若さ”を武器にできたかもしれない。  でも、30代になったら武器にできるものは自分自身で磨かなければならない。  例え好きな人ができても、武器になるものなんて、なにもない。そんな風に、何かと理由付けては、傷つくのが恐くて恋愛から逃げていたのかもしれない。  気が付けば、彼氏いない歴と年齢が同じになっていた。  周りからあれだけ言われていた「彼氏できた?」の言葉も、今はもうない。  ここまでくれば、みんな腫物に触るように、男関係の話を私にしなくなる。  一部では男じゃなくて女の人が好きなのでは? なんて噂話まで飛び交っていたようだ。  こうなったら、性別なんて関係なく、私だって恋のひとつやふたつはしてみたい。  でも年齢を重ねれば重ねるほど、彼氏いない歴は言いにくくなる。  むしろ、絶対に隠さなければいけないのではと思うほど。  初めましての人と恋バナになったとしても、友達の恋愛相談で培った知識であたかも彼氏います感を装ってしまう。  これじゃあ、もしも恋愛関係になりそうになっても「実は付き合ったことなくて、処女なんです」なんて言ったところでドン引きされるに違いない。  だいたいの男たちは重く感じて逃げるんだ。  そう思うと、誰も好きになれないし、興味も持てなくなる。  まあ、このまま一生おひとりさまを楽しむのも悪くないか。  なんて、最近は開き直っているけど。 「おなかすいたな……」  卵、牛乳、納豆、水、栄養ドリンク。いつもあるものしかないのはわかりきっているのに、スカスカの冷蔵庫を覗いては、いますぐお腹を満たしてくれるものを探す。 「コンビニ行くか」  結局、そこには食べたいものなんか入っているわけもなく。  起きてそのままの格好から、コンビニに行く用として置いてあるロンTとスウェットパンツに穿き替える。  ボサボサの頭は帽子で隠して、洗っていないままの顔はマスクで隠す。
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